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大阪地方裁判所 昭和31年(ワ)5180号 判決

理由

甲第一号証によると、本件約束手形は原告主張のとおりの要件が記載され、振出人として三洋硝子株式会社取締役下村幸夫なる記名捺印が存し、被告植田製函有限会社及び被告行島の夫々拒絶証書作成義務を免除した白地式裏書がなされ、原告は裏書の連続による適法の所持人と認められ、且つ右手形は支払期日に支払場所に呈示されたがその支払を拒絶された事実が認められる。

被告下村は本件手形の振出を否認するが、被告下村名下に押印された印影の真正なことは争わないから、反証のない限り被告下村は前記振出人名義を以て振出したものと認むべきところ、何等の反証もないから真正に振出されたものと認めなければならない。

ところで原告は右三洋硝子株式会社は不存在であることを前提して、振出人は被告下村であると主張し、被告下村は右会社の存在しないことは争わない。而して被告下村は代表取締役の資格を表示せず単に取締役の資格を表示しているに過ぎないけれども、振出人の記載形式からみて右会社を代理して振出したものと認むべきところ、右会社は存在しないのであるから被代理者は存在しないこととなる。斯様に被代理者の存在しない場合においても、手形法第八条を準用して、代理人として署名したものは自らその手形上の義務を負うものとするのを相当とする。

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